Numbering Stamp

Numbering Stamp

Numbering Stamp

Numbering Stamp

Numbering Stamp

回転印

サイズ:180cm×180cm
素 材:綿布、岩絵具、胡粉、障子紙
制作年:2006年

number stamp

size:180cm×180cm
material : cotton cloth, natural mineral pigments,
gofun, syoji paper
2006

この作品は、画面を覆っている障子紙の花柄の模様が、観る角度や距離などによって(反射などによって)変化します。また、遠くから観ると、真っ白な無地の正方形の絵のように見えますが、近づいてみると、画面に描かれたグリッドや、その縦と横に走るグリッドによって生まれた白い無数の小さな長方形に、数字が烙印してあることにも、お気づきになれるかと思います。

「回転印」というタイトルは、そのまま、この烙印を回転印によって行ったことに由来しています。無数の小さな長方形に押された数字は、上から覆っている半透明の障子紙によって、ぼんやりとしか読みとれないですが、ここに押された数字は回転印をランダムに回すことによって押されたもので、恣意的なものといえます。回転印は、通常では特定の日時などを明記するために使われますので、おのずと観る人は、特定の年、月日や時間などについて想像しがちですが(もし障子紙越しに数字が読みとれた場合ですが)、ここにひとつひとつ烙印された数字は、ただ右の長方形の数字が、左の長方形とは違う数字である、上の長方形の数字が下の長方形の数字とは違うというだけだといえます。その上下左右の数字の違いは、ただ記号としての差異でしかありませんが、しかし、描かれた縦軸と横軸のクリッドの隙間であっただけの白い面を、烙印によって唯一(固有)の長方形に変えていることは事実です。

そして、この小さな長方形は、この正方形の絵画そのものを二分割した比率を反復してもいます。この正方形の絵は二枚のパネルをつなぎ合わせて作られています。このパネルのサイズは、一般的に作られているベニア板の規定の3×6(サブロク)サイズと呼ばれるもので、日本では畳一畳の寸法としておなじみのものです。一見、「回転印」は、観念論的に感じられるかとは思いますが、この即物的な白い正方形には、私たちが生活の中で慣れ親しんだ身体的な比率が存在しています。(使い続けられる寸法には、かならず人間の身体的比率にあうように洗練された意味があります。)もちろん、絵画は、畳や実際の日用道具のように実用的な使い道を持ち合わせてはがいませんが、絵画を視覚のみで鑑賞する場合でも、そこにみる人の身体的運動の記憶が介入してくるのではないかと思います。たとえば、描かれた絵画の筆触を眼で追うことによって、みる人は自然と、画家の身体の動きを反復しながら、画面に表わされた意味を読みとれるといった経験からもわかるでしょう。

一見、均一で運動性を感じられない白い正方形には、反復され続ける形と、差異による固有の形が隠れています。そのような、まずは視覚に訴えるものでありながら、絵画に特有な運動性を出したいと思いました。そして、この平面を、花柄の障子紙で包んだ理由は、回転印の数字がはっきりと読みとれないことで、数字の意味をぼかしていくこととがひとつあります。また、その他の理由として、この額縁のない絵画が、包むことによってモノ(物質)としての扱いをうけることで、イリュージョンを生み出す機能としての絵画空間を否定しながら、それと同時に、障子=窓であるというイメージも捨て去ることなく持ち続けたかったからです。柄のある障子紙をえらんだのは、膜のような薄い面を強調するためもあります。花柄というのは、窓に掛かるカーテンのイメージからきています。しかしながら、この作品は、写実的でもなく、かといってけっして現実の空間(展示される空間)とも同化することのない揺らぐ場所のようなものです。