Egg room 316
サイズ:(幅)3,000mm×(奥行)7,000mm×(高さ)3,000mm
素 材:卵、木材
制作年:2005年
size : (W)3,000mm×(D)7,000mm×(H)3,000mm
material : eggs, wood
2005
場所は当時、私が大学内で使用していた未来館316室。この室内の広さは、およそ21平方メートル。少しいびつな長方形の形をした角部屋で、奥行(壁面)は7メートル、横幅は3メートルほど、天井高3メートルほど。この空間をすべて使ってのインスタレーションです。
私の制作する上での関心事のひとつは、絵画表現の可能性です。しかし《egg room 316》は、ご覧のとおり、絵画作品ではなく、実際の部屋を作品空間としたものですが、この作品を制作しようと思い立った動機も、絵画空間についての考察がもとになっています。私は、通常は絵画を制作する場合、画面を床に水平に寝かせて描きます。好んで用いる絵具が水気を多く含むため、キャンバスを垂直に立て掛けて描くのにはむかないという理由があります。また、故意ではない絵具の滴りを避けたいというのもあります。
西欧絵画がルネサンス以来、あたかも三次元のような空間を絵画の中に表現しようと試みたとき、(デューラーの有名な言葉が示すように)西欧絵画は、対象物をピラミッド(放射線状)の垂直の秩序に置き換え構成しました。直立した人間の視点は、確かに垂直の視点です。遠近法の空間を構成しているのは、そのような、「絵を見る人」の固定された視点であるといえます。しかし、近代絵画が再現描写の意味を失ったとき、絵画を描く(見る)視点も、垂直である理由を失くしたといえます。
それを意識すれば、なおさら、現実の重力にあらがいながら、絵具を置く意味を感じませんでした。では、もし、私自身が壁面に絵画を描こうとするならば、現実の重力にまったく逆らわないで描く方法があるのではないかと考えました。
《egg room 316》では、筆を用いて、重力に抵抗しながら描くよりも、生卵が平面に打ちあたったまま、自然に流れ落ちることで、壁に絵を構成できるようにと描きました。格子によってその場所を閉ざしたのは、この作品が壁画に囲まれた非現実的な空間にしたかったからです。私は、《egg room 316》によって、現実の重力とともにありながらも絵画として構成された空間を作り出したいと思いました。
Egg Room 316 ist zugleich Installation und Wandmalerei mit Eiern, einem Material traditioneller europäischer Malerei. Traditionelle Bilder vermitteln die Illusion von drei Dimensionen. Das Wandbild verzichtet nicht auf räumliche Illusion, schafft jedoch eine andere als die der Zentralperspektive.
Es gibt viele wechselnde Perspektiven, die von jedem Betrachter abhängen. Immer in Bewegung sind viele Bilder und eine Vielfalt an Räumen zu sehen.